2017年9月27日 文部科学省・厚生労働省交渉要望書
昨年差別解消法が施行され、合理的配慮が各地で求められている中で、特に知的しょうがいしゃの人たちに対する状況や、配慮が遅れています。今回の交渉は知的しょうがいしゃの人たちが出した要望をまとめ、文科省と厚労省それぞれに要望書を提出しました。
文部科学省 要望書
要 望 書
文部科学大臣
林 芳正 殿
全国公的介護保障要求者組合
委員長 三井 絹子
貴省貴課におかれましては、日頃より教育行政にご尽力いただき、ありがとうございます。
ご存知の通り、2014年に障害者権利条約を国連に批准し、また昨年には障害者差別解消法が施行されました。長い間差別され、長年にわたり行政に訴え闘ってきた私達にとって、私達の状況が、やっと少しでも改善されると期待していますが、なかなか現状は変わりません。
私達重度の全身性障害者が地域で生きていく上でも様々なバリアがあり、生きにくい地域社会ですが、特に地域で生活をしている知的障害者の人たちは、介護制度が遅れていることに加えて、周りの人に理解されることも少なく、また介護者不足も伴って、とても生活しづらい深刻な状況です。特に知的障害者の人の話をきちんと聞いてくれるといった合理的配慮は、あらゆる場面でほとんどなされておらず、地域で自立していく中で、人権を侵害されることもとても多く、地域での生活はとても逼迫しています。
障害者権利条約や障害者差別解消法といった法律が施行されても、それを広げる責任を持って行政が率先して徹底した合理的配慮を示さなければ世の中に浸透していきません。文科省は、しょうがい児を分ける教育が生み出した、現在の偏見や無関心を根本から改め、教育を通じて、障害者への理解を広げ、共に生きる社会をつくる重要な役割を持っています。
まずは、この場を借りて、知的障害者本人の声を、行政は真剣に聞いてください。
要望内容
- しょうがいがあっても、地域の普通学校に行けるようにして下さい。
分けないで下さい。 - 私たちは、地域でアパートを借りて、介護者をいれて一人暮らしをしています。介護者を増やしてほしいです。
だけど、あまり知られていないです。
私たちのことを知ってほしいです。
私たちと関わってほしいです。
国で小学生、中学生、高校生、大学生の介護体験を私たちとする機会を作ってください。厚生労働省の皆さんも、私たちの介護体験をしてください。
そうすれば、私たちのことがもっとわかります。
厚生労働省 要望書
要 望 書
厚生労働大臣
加藤 勝信 殿
全国公的介護保障要求者組合
委員長 三井 絹子
貴省貴課におかれましては、日頃より障害福祉にご尽力いただき、ありがとうございます。
ご存知の通り、2014年に障害者権利条約を国連に批准し、また昨年には障害者差別解消法が施行されました。長い間差別され、長年にわたり行政に訴え闘ってきた私達にとって、私達の状況が、やっと少しでも改善されると期待していますが、なかなか現状は変わらず、むしろ悪化しています。
私達重度の全身性障害者が地域で生きていく上でも様々なバリアがあり、生きにくい地域社会ですが、特に地域で生活をしている知的障害者の人たちは、介護制度が遅れていることに加えて、周りの人に理解されることも少なく、また介護者不足も伴って、とても生活しづらい深刻な状況です。特に知的障害者の人の話をきちんと聞いてくれるといった合理的配慮は、あらゆる場面でほとんどなされておらず、地域で自立していく中で、人権を侵害されることもとても多く、地域での生活はとても逼迫しています。
障害者権利条約や障害者差別解消法といった法律が施行されても、それを広げる責任を持って行政が率先して徹底した合理的配慮を示さなければ世の中に浸透していきません。
まずは、この場を借りて、知的障害者本人の声を、行政は真剣に聞いてください。
要望内容
- 施設やグループホームに入りたくありません
- わかりやすくしてほしいです
- 介護者を増やしてほしいです
- 人材不足を早急に解決してください。
- 早急に「パーソナルアシスタンス制度」を実現してください。
1.グループホームは小さな施設です。
グループホームは、やりたい事を自分で決められません。
管理されています。(御飯の時間、お風呂の時間、寝る時間が決められてい ます)
やりたい事は、自分で決めたいです。
グループホームは介護者が一人一人に24時間いません。
やりたい事が自分の好きな時にできないです。
だから、施設やグループホームには、ぜったいはいりたくないです。
地域で介護者を入れて、アパートを借りて、一人暮らしをずっとして
いきたいです。
1.漢字が読めない人がいます。
わたしたちに必要な書類には、全部ルビ(ひらがな)をふって下さい。
2.難しい文章がわかりません。わかりやすい文章を作ってほしいです。
文章だけだと、わからないです。
絵をいれてください。
3.案内表示板や全ての標識に絵やひらがなを書いて下さい。わかる事が増 えます。
<例えば>
・ひょうしき 金 沢 → 金(かな) 沢(ざわ)
漢字やマークだけだと間違えます。色をつけたり、ひらがなを書いてください。
4.質問です。
・前回作ると言っていた、「わかりやすくするためのガイドライン」をください。できていないのなら、いつできますか?いつもらえますか?
・前回も、今回もカクニンジャーの書類にルビ(ひらがな)が、ありませんでした。去年かんがえますと言っていました。どうかんがえたんですか?
1.私たちは、介護者が24時間必要です。
2.しょうがいがあっても、地域の普通学校に行けるようにして下さい。
分けないで下さい。
3.私たちは、地域でアパートを借りて、介護者をいれて一人暮らしをしています。
だけど、あまり知られていないです。
私たちのことを知ってほしいです。
私たちと関わってほしいです。
国で小学生、中学生、高校生、大学生の介護体験を私たちとする機会を作ってください。厚生労働省の皆さんも、私たちの介護体験をしてください。
そうすれば、私たちのことがもっとわかります。
介護体験ができるように文部科学省にも聞いて下さい。
4.質問です。
前回、「私たちは24時間介護者が必要です」と聞きました。どう考えてくれましたか?
障害福祉課は、昨年の交渉において「人材不足については処遇改善加算で対応する」と回答されました。しかし私たち重度障害者に派遣される介護人がこれによって確保されているという実態はなく、むしろ人手不足は深刻化してきています。
今までの数々の交渉を重ねる中で、支援費制度に移行するときの交渉では、「見守り」を中心とした長時間の介護保障を協議してきました。しかし当時の厚労省は、介護保険の単価ではとても難しいとのことで、単価は少ないが長時間の介護を保障する日常生活支援(全身性障害者介護人派遣事業の運用をもとにした)を設置しました。しかし介護保険を中心とした事業所が多く、現在の重度訪問介護を請負う事業所はとても少ないのが現状です。
障害者総合支援法の基本理念には、「すべての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活または社会生活を営むための支援を受けられることにより、社会参加の機会が確保されること」と社会参加が謳われ、さらに「どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され」と基本的人権が尊重されています。しかし単価が安く、負担の大きい重度訪問介護を受ける事業所は少なく、実際は事業所のヘルパーの都合によって生活が縛られ、障害者本人の望んだ生活を実現するのは難しいのが現状で、全国から悲痛な訴えが寄せられています。
例えば、大阪では、ある事業所に、朝8時から17時までのヘルパー派遣を依頼したものの、来ていたヘルパーが辞めると代わりに入れる人がいないからと、どんどん派遣時間を減らされて、減らされた分は自分で他の事業所を探し、つぎはぎでヘルパーを入れざるを得ません。また細切れで交代のため、外出していてもいったん交代時にはうちに戻らなければならず、病院や、プレゼントを選ぶような買い物、遠出の外出はできない状態となりました。
また人手不足のため、辞められたら困るという不安から、ヘルパーにいやなことをされても注意しづらくなったり、またトイレに行きたくないのに、外出時に「ここでトイレに行ってもらわないと困る」とヘルパーに言われて、ヘルパーに対して人権侵害を訴えたくても、人がいないために交代をお願いすることもできず、我慢せざるを得ない状況です。
また都内でも、事業所から突然電話一本で一方的な派遣打ち切りをされる人が後を絶ちません。数日前に、人が辞めたからと突然派遣打ち切りの電話が入り、他の事業所を何十件当たっても、重度訪問は安くて受けられないとか、長時間は無理といわれ、市区町村に協力を仰いで一緒に探してもらってようやく見つかったと思ったら、その事業所から来たヘルパーは、高齢で介護が出来ず、抱えられたときに非常に怖い思いをした人もいます。半年たってもその穴は埋まらず、心労は重なるばかりです。中にはどうしても介護する人がいないために、行きたくもないデイケアに行かされている人もいます。
国は支給決定に当たって、個人の状況を勘案して必要な支給量を決定するよう自治体に通達を出していますが、自治体によっては上限を設け、24時間介護の必要な障害者が市民として生活しているにもかかわらず、何度要求しても上限を理由に断られる自治体もあります。支給量が足りなくて、その上人がいなくて、派遣されない時間は排泄を我慢し、体を壊してしまう深刻な状況にある、障害者の相談もきています。他にも「急な病欠でヘルパーが休んでも、交代要員がいない」「入浴介護のできる交代要員がいないので、その人が休めば風呂にはいれない」など日常生活がままならない状況となっています。
また事業所からの研修で介護に入られても重度の障害者の介護は大変ということで高齢者の介護に戻っていく人も多く、時間をかけてやっと新人が育ったと思ったら、慣れた人が辞めてしまうという声も各地から寄せられています。このように重度障害者の介護を担える人材が不足する中、特に人手が足りない盆暮れには短期入所をすすめられ、派遣を打ち切られることを恐れて、望んでもいない施設での生活を強いられるところまで私たちの生活は逼迫しています。
重度障害者の介護を担う人手不足は今も昔も変わりませんが、これほどの厳しい介護状況を招いたのは、厚労省の責任です。なぜなら措置から契約へと制度を変え、行政は責任を民間に丸投げし、障害者の介護施策を介護保険に統合しようと、介護保険と同じ仕組みを導入して、事業所派遣に一本化し、資格重視にしてしまったからです。資格の研修内容が高齢者のマニュアルで構成されているので、障害者に対応できる人材は育成されていないばかりか、そこで習ったことが障害者の介護には弊害となることもあり、むしろトラブルが多くて困っています。
以前も厳しい状況はありましたが、資格が問われなかったことで、なんとか自分で介護者を見つけて市区町村に登録し、介護体制を自ら作って、やっと生活していくことができました。しかし今、事業所から派遣されるヘルパーは、重度障害者の生活や介護に即しておらず、新しい人材を増やしたくても、資格の壁が邪魔をして、なかなか介護人を増やすことができません。
また昨年より「我が事・丸ごと」政策が打ち出され、今年法改正も行われたことで、大変不安を感じています。なぜならそれぞれの立場(こども、障害者、高齢者など)にあわせた支援と、それぞれの保障には守らなければならない人権と権利があります。予算を削減することしか考えず、当事者の意見を無視してまとめられてしまったら、混乱を招き、人権侵害をうみだしかねません。そうなれば障害者権利条約でうたわれている人権が無視される政策がすすめられ、今よりもさらに障害者の生活が壊されてしまいます。私たちは人手不足だからとデイサービスや施設に行かされたくはありません。共生型サービスなるものが作られ、訪問介護事業所が高齢者と障害者両方の派遣をやりやすくなる仕組みもできるようですが、これも問題解決にはならず、むしろ介護保険との統合のためではないかと危惧します。私たちは共生型サービスに反対します。
また保育士や介護福祉士の研修課程が一部共通になったからといって、重度障害者の介護を担える人材のすそ野は決して広がりません。これまで支えてきたのは資格のない多くの市民でした。結局、弱者をひとまとめにした安上がり福祉を目指しても、重度障害者の介護を担える人材不足は解消されず、「我が事・丸ごと」政策で問題が解決しないのは明白です。
この深刻な現状を打開するために、厚労省は、処遇改善によるお金の保障だけではなく、本腰を入れて人材育成と募集・派遣のしくみまたはシステムを作る義務があります。私たちは昨年、資格にとらわれない「パーソナルアシスタンス制度」を提起しました。これは40年にわたる重度障害者の自立生活の歴史と実践を踏まえ、当事者のニーズに合った形で人材を増やしていくしくみとして提案したものです。現段階で、資格の壁を取り払い、事業所を通さずとも、早急に介護に携わる人を増やしていくための緊急の人材確保策です。地域で自立生活している障害者も年々年を取って加齢による障害が進行していくなかで、すでに介護人がいないために体と生活が壊れてきています。 この深刻な人材不足の課題に対し、厚労省は早急に対応してください。
以上の要望を、早急に実現してください。