全国公的介護保障要求者組合

どんなに重度のしょうがいしゃも地域で当たり前に・・・・そのために介護保障を!

2016年9月28日 要望書

   

要望書

厚生労働大臣
塩崎 恭久 殿

2016年9月28日

全国公的介護保障要求者組合
  委員長  三井 絹子

 日頃より、貴省におかれましては、しょうがい福祉にご尽力いただき、ありがとうございます。
 私たち「全国公的介護保障要求者組合(以下「要求者組合」という)」は、約30年前から重度しょうがいしゃの介護保障について、貴省と交渉を重ねてきました。
 長年「組合」を率いてきた代表の新田勲さんは、2013年に亡くなりましたが、施設収容施策があたりまえだった時代に、施設を飛び出し、自立生活運動の先駆者として、しょうがいしゃの自立を訴えてきました。当時、厚生省が「介護の4時間以上必要なしょうがいしゃには施設を用意してあります」と公然と言っていた40年前に、24時間の介護保障運動をはじめ、しょうがいしゃの自立と人権を勝ち取るために、命がけで運動を行ってきました。この運動によって、全国で自立生活を実現するしょうがいしゃが増えていったという歴史があります。
 これまで長い間差別に苦しみ、運動をしてきた多くのしょうがいしゃにとって、2014年に日本も「障害者権利条約」を批准したことは、しょうがいしゃを差別しないことを世界に宣言し、今年4月から「障害者差別解消法」が施行されたことにより、奪われてきた人権が保障される時代に変わるものと期待しているところですが、現状は、以前よりも悪くなる兆しを感じずにはおれません。それは誰にでも権利として保障されている衣食住、そしてプライバシーなど、一つ一つに制度が介入しすぎて、しょうがいしゃの人権を奪ってきているからです。
 2003年に措置から契約へと変わり、行政の責任が各民間へ移されたとたん、事業所では担いきれない重度のしょうがいしゃは、事業所による派遣の打ち切りや介護内容などのトラブルで日々混乱し、自分の生活が脅かされても、どこにもその現状を訴えるところがなくなってしまいました。今までしょうがいしゃ自らの選択によって自分の望む生活をつくってきたのに、国の出す規制によって、事業所は介護内容を制限し、今やしょうがいしゃの自己決定、自己選択は奪われ、ともすると行政や事業所の意向に沿った制度の枠内で生活をつくられ管理されてきています。
 そのため差別解消法が施行されたというのに安心感よりもむしろ今、いつ自立生活が壊されてしまうのかという恐怖と怒りを感じています。これは明らかに「障害者権利条約」や「差別解消法」に反するものです。
 私たち「要求者組合」は、重度のしょうがいがあっても地域であたりまえに生きたいと願い、日々あらゆる差別と闘い、自立生活を作ってきました。しかし重度のしょうがいしゃは今、現行の制度から切り捨てられようとしています。必死でつくってきた私たち重度しょうがいしゃの自立生活を、国が壊す権利はありません。
 「要求者組合」としては、厚労省に対し、重度しょうがいしゃの逼迫した生活を招いている現行制度を早急に改善していただきたく、以下のことを要望いたします。

【障害福祉課】

1.介護者不足の解消について

 1970年代初めに、重度のしょうがいしゃによる自立生活運動が始まって以来、そもそも重度しょうがいしゃの自立と生活を支えてきたのは、学生や地域の人など、資格はなくても、しょうがいしゃを助けたいと思うボランティアの人たちでした。このような無資格の人達が、しょうがいしゃの自立を支えていくための制度として生まれたのが、1974年、東京都の「重度脳性麻痺者介護人派遣事業」(のちの「全身性介護人派遣事業」)であり、生活保護の「他人介護加算特別基準」でした。この二つの制度的基盤により、支援費制度が始まるまでの30年間は、しょうがいしゃが自ら探してきた介護者たちが携わり、自立生活を支えてきました。

 この「全身性障害者介護人派遣事業」は、「当該しょうがいしゃが推薦するヘルパーを派遣し、介護サービスを提供することにより、全身性しょうがいしゃの地域社会での自立生活と社会参加を支援すること」を目的として始まりました。これはしょうがいしゃが望む、その人らしい生活を実現する重要な制度であり、この東京都の制度が全国に波及して、地域で自立生活を実現するしょうがいしゃが増えていったという歴史的な歩みがあります。

 その後、措置から契約に変わり、制度の変遷と名称の変更はありましたが、しょうがいしゃの自己決定・自己選択を重視したこの制度の運用が、現在の「重度訪問介護」に引き継がれていると、「要求者組合」としては自負しています。
しかし2003年に支援費が始まって、契約方式となり、同時に資格が強化されていく中で、たった13年の間に、それまで作り上げてきた介護体制は壊され、重度しょうがいしゃの生活は逼迫し、自己決定と人権が阻害される事態を招いています。

 一見、介護保険の実施も伴い、介護事業所が大幅に増え、介護が労働として保障される中、支給時間数も増えたことで、介護保障が拡大したかにみえます。しかし特に重度しょうがいしゃの生活は、重度に対応できるヘルパーが育成されていないため、派遣してくれる事業所は少ないのが現状です。実際、事業所から人がいないからという理由で突然派遣を打ち切られたり、介護内容を制限されたり、介護の交代がうまくいかないからと外出を断られ、緊急時の交代要員もいないため、特に人手の足りない盆暮れには短期入所を迫られたりと、窮地に立たせられているのは重度の人なのです。

 昔は介護制度がほとんどなかったため、しょうがいしゃ自らが、街頭や大学などで毎日のようにビラをまき、ボランティアを集めて、自分のしょうがいや介護を一から教え、信頼関係を作りながら育成してきました。

 重度しょうがいしゃの介護は、一人ひとり介護の内容が違います。言語しょうがいの聞き取りや、足文字・指文字の読み取りなどは、慣れた介護者しか読むことができません。体調を維持するため、こまめな水分補給や頻繁な排泄介護、体の緊張やけいれんにあわせた二人がかりの入浴、褥瘡や硬直を防ぐための深夜の寝返りなど、その日の本人の体調に合わせて介護を行う必要があります。また嚥下しょうがいがある場合はそれに合わせた食形態の準備と飲み込みやすい安全な食事介護、痰の吸引や吸入など、一人に係る介護の密度はとても濃いのです。一人一人のしょうがいのニーズにあわせた長時間の介護には、「見守り」が不可欠であり、自立生活を維持していく上で欠かすことはできません。

 このようなしょうがいに合わせた微細で複雑な介護に対応できるヘルパーの育成は、高齢者の介護マニュアルとは全く異なります。個々人のしょうがいにあった介護は、一定のマニュアルはなく、しょうがい当事者との個別の関わりを通して習得する以外に方法はありません。ヘルパーとして一番大切なのは、しょうがいしゃと理解できるまで向き合うことなのです。しかし、介護を頼んでも、「事業所の指示による業務内容と違うことはしない」と断られたり、「資格研修で習ったことと違う」と介護を拒否されたり、本人の指示を聞かずに資格研修で習ったやり方を強制されて骨折事故が何件も起こるなど、資格重視や事業所の意向によって、しょうがいしゃとヘルパーとの関係構築を難しいものにしています。

 「要求者組合」としては、1998年8月に、「パーソナルアシスタンス制度の創設」を、当時の厚生省との交渉において要望しています。これについては「骨格提言」でも検討されていましたが、その後立ち消えになってしまい、「要求者組合」としては、とても危機感を感じています。なぜならしょうがいしゃが自立生活をする上で、一人一人のしょうがいにあった介護を受けるには、現在の事業所方式だけでは対応できないからです。選択肢として自薦登録方式によるパーソナルアシスタンス制度が実現しない限り、地域で生活を維持していくことはできません。

  • 重度しょうがいしゃの自己決定と人権を最大限尊重した自薦登録ヘルパーを使える「パーソナルアシスタンス制度の創設」を早急に求めます。
    厚労省としては、どうお考えですか。
  • 介護報酬の切り上げや処遇改善で、実際に人材確保の成果が上がっていますか。資料などがあったらお答えください。
  • 国としては、現在の介護者不足に対して、今後どのような人材確保策を考えていますか。
  • 重度のしょうがいしゃの介護の現場では、資格研修の強化により、人手不足に拍車がかかっています。今後も研修等を強化するお考えでしょうか。

2.セルフプランについて

 昨年、厚労省との話し合いで障害福祉課から、セルフプランを希望する人には、それを認めていくことが望ましいという回答をいただきました。

 実際はセルフプランを自分で立てることができても、制度の枠によって制限されてしまい、生活に支障をきたしています。私たちは自分の生活は自分で組み立て、健常者と同じようにあたりまえの生活をしたいと望んでいます。しかしサービスを使う場合に、市区町村の窓口においては、計画相談支援の説明はされていますが、セルフプランがあることを提示されない場合が多いため、セルフプランを知らず、困っているしょうがいしゃもいます。

  • 厚労省として、市区町村に対し、セルフプランをきちんと提示した上で、本人が選択できるように、主管課長会議等で再度、周知徹底して下さい。

3.介護保険優先原則について

 現在においても、しょうがいしゃの就労やさまざまな場面において社会的障壁などにより差別解消が進んでいない中で、しょうがいしゃ施策は「公助」で行うべきであると考えます。

 しかし支援費以降、しょうがいしゃの介護サービスの制度は、区分判定やケアプランの提出など、高齢者の介護保険の仕組みにどんどん近づいています。そして実際に事業所から提供される介護についても、介護保険の運用に準じて、重度訪問介護の介護内容も制限されてきています。その上、昨年の社会保障審議会障害者部会において、学識経験者から「介護保険との統合を検討する必要がある」という意見が出され、しょうがいしゃの実態を踏まえない介護保険との統合の動きには大きな不安を感じています。

 現在、65歳を目前にしたしょうがいしゃは、自らの生活を守るために、引き続きしょうがいしゃ施策で生きていけるよう各地で闘っています。

 この問題に関して、今年1月の院内集会で障害福祉課に訴えた際、「介護保険の事業所指定をとりやすくして、今までのヘルパーを派遣できるようにする」という方向性が話され、すでに5月には法案改正で決定されてしまいました。私たちの意見はどう受け止められたのでしょうか。
しかしそもそも重度しょうがいしゃの介護と、高齢者の介護とは、「見守り」等の概念が異なることや、社会参加を目的とした外出がみとめられていないなど、質が全く違います。しょうがいしゃは一人ひとりしょうがいが違い、65歳になるまでしょうがいしゃ施策で長年受けて生きてきたのに、65歳になって介護保険に切り替わると、介護の質が全く変わってしまい、命の危険を招くので、「要求者組合」としては、「介護保険との統合」や「介護保険優先原則」はもとより、そもそも介護保険には反対です。

  • 介護保険については、65歳になっても、本人が望む場合は、しょうがいしゃ施策のみによる介護サービスを使えるよう、今まで通りの運用でお願いします。

【生活保護課】

4.生活保護の資産調査について

 今年1月の院内集会での生活保護課との話し合いの場において、昨年4月より通知された資産調査の強化実施に伴い、自治体の中にはプライバシーに配慮のない方法で資産調査が行われ、人権侵害をこうむっているといったしょうがいしゃからの訴えが各地から上がりました。「このような人権侵害の実態を踏まえ、自治体に対して注意を喚起する通知を出すべきではないか」という質問について、生活保護課としては「課題を整理して、検討します」との回答をいただきました。

  • 資産調査に伴うプライバシーの侵害について、その後どのような対策が検討されたのでしょうか。

5.しょうがいしゃの生活水準を下げないでください

 物価水準のスライドに合わせるとして、「生活保護」の水準の切り下げが行われています。しょうがいしゃの多くが働ける場がなく「生活保護」を権利として受け生活しています。「生活保護」は国民全体の制度ですが、しょうがいしゃにはしょうがいしゃ特有の事情があります。そこを考えていただけないとしょうがいしゃの生活は続けられなくなります。
 車いす生活や介護者の常駐する生活による住宅事情、寒さによる緊張が地獄だという事情などを汲んでいただけないと生活できません。

  • しょうがいしゃの生活に対する考慮を障害者加算や特別基準という形で「生活保護」に組み込んでいただくか、「生活保護」の水準を上回る「障害者年金」などの仕組みを考えてください。それらがない限り、単なる物価スライドによる「生活保護」水準の切り下げは、しょうがいしゃとしては認められません。
    厚労省としてのお考えをお聞かせください。

6.障害者加算他人介護料の必要性について

現在、しょうがいしゃ施策による介護制度は資格重視であり、この他人介護料特別基準は、資格がない人でも介護に携わり、介護不足を補なうことのできる唯一の制度です。
重度のしょうがいしゃは、1日24時間の介護保障に達していない人もいるため、この制度は命綱であり、自立生活を支える重要な制度です。

  • 「障害者加算他人介護料特別基準」の必要性を十分理解して、これまで通り運用してください。

【障害福祉課、生活保護課】

7.しょうがいしゃの人権を守って下さい

 制度の改変や運用にあたって行われる調査のたびに人権侵害が増え、各地のしょうがいしゃの悲鳴が「要求者組合」にも寄せられています。それらについて「要求者組合」としても取り組みますので、厚労省も日頃監視しているとは思いますが、相談に乗ってください。
 「障害者差別解消法」が今年4月から施行されましたが、自治体の対応要領の作成にも見られるように、各地ではまだ整備にばらつきがあり、差別解消は国の責務として取り組む必要があります。各自治体の差別的な対応に関するしょうがいしゃの訴えに対して、厚労省も国として対応していく責任があると思います。

  • 今後、人権侵害に関わるしょうがいしゃの相談に対応してください。

 - デジタル会報

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